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日本の暮らしとは。
―木造建築と風土の関係―

株式会社WELLNEST HOME
日本では、古くから木造建築が家づくりの主流とされてきました。木のぬくもりや香りは、私たち日本人の暮らしに安らぎを与えてくれます。その一方で、たびたび起こる災害のニュースを目の当たりにして、「地震や火災が起きたとき、やっぱり木造の家は弱い」と感じる人も少なくないのでは。
実際のところ、木造の家は「弱い」のでしょうか。日本の家づくりの耐震性や、伝統の木造建築の技術にも思考を巡らせながら、日本の風土とも調和した安心で安全な家づくりについて再考します。

「強い家」の理由とは

地震と隣り合わせに生きる私たち。
1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、2024年の能登半島地震など、日本は、過去数十年の間だけでも、大きな地震を何度も経験してきた。阪神・淡路大震災の際には、犠牲者の8割が建物の崩れによるものだったという調べも発表されている。
そして、日本各地で大きな地震が起きるたびに、日本の耐震基準は少しずつ見直されてきた。
その中で、明らかになってきたのは、建物は軽いほうが耐震性は高いということ。つまり、一般的に耐震性が優れていると言われている鉄骨やコンクリートの建物に比べても、構造を理解していれば、木造住宅もそれに劣らない耐震性を出すことが可能なのだ。
木造住宅においては、地震や風などの水平の力から建物を支える「耐力壁」が多ければ多いほど耐震等級が上がっていくようになっていて、最高ランクは「耐震等級3」だ。熊本地震を例にとると、被害の大きかった地域でも耐震等級3で設計された戸建ては、ほぼ無被害または軽い被害ですんでいる。
ただ、耐震等級3というだけでは、本当に地震に強い家とはいえない。揺れにくい地盤を選ぶことも大切だ。一般的な地盤調査とは異なり、振動を与えて地震時の揺れやすさを推測する微動探査と呼ばれる調査法がある。家を建てる前にこの微動探査を行うことで、より安心で安全な家づくりの土台につながっていく。
また一方、木材の弱点に、シロアリに食べられてしまうことや、水に弱く、水漏れや結露などが原因で腐食してしまうことも挙げられる。そのため、なるべく壁の中の湿気や、結露の発生を防ぐなど、木を腐らせないつくりが肝心になる。
「耐震等級3」「揺れにくい地盤」「木材の腐食やシロアリ被害を防ぐ」
この3つの条件を満たす木造住宅こそ、家族が安心して暮らせる「強い家」といえるのだ。

木造を基とする日本の建築

ここで、日本の昔ながらの家づくりについて考えを巡らせたい。
古くから、多くの日本の家は「木」でつくられてきた。西洋からレンガやコンクリートを使った建築技術が入ってきた現代でも、戸建住宅の約8割は木造住宅だ。
なぜ、「木造」の家なのだろう。
国土の約7割が森林でできている日本では、まず、木材が手に入りやすかったことが挙げられる。木は加工しやすく、軽いことから、家をつくる材料として古くから使われてきた。素材が豊富にあったことだけでなく、家づくりをするうえで、木は、日本の気候や地質とも相性がよかった。
日本には四季があるが、夏は湿気が多くて蒸し暑く、一方、冬は寒くて乾燥するという特有の気候である。室町時代に書かれた「徒然草」には、「家の作り様は、夏を旨とすべし」という有名な一説が出てくる。夏は湿度が高いため、汗が蒸発しづらく、肌がべたついて、不快感につながる。そのため、陽を避け、風を通すなど、夏を快適に暮らすための工夫が、昔から日本の家づくりの基本となってきたのだ。
快適を追及する工夫として、日本古来の建物にはたいてい「軒・庇」がついているが、これは、日差しの強い夏に日を遮ることで涼しい環境をつくるためだ。あるいは、細い竹からつくる「すだれ・よしず」も、日差しを遮りながら、風を通すための知恵としてうまれたもの。
床面を地面よりも高い場所につくる「高床式住居」も、地面からの湿気をさけて通気性をよくするための工夫のひとつ。昔ながらの日本の伝統家屋では、壁が少ないのも特徴的で、固定された壁の代わりに障子やふすまを用いて、風の通り道をつくった。
そして、自然素材の木材には、湿度が高いときには湿気を吸収し、乾燥しているときには溜めた湿気を吐き出すといった湿度を調整する画期的な機能を持っている。夏の湿気を抑えて快適に過ごせるだけでなく、乾燥によりウイルスの活動が活発になる冬の湿度調整という衛生面での役割も担っている。石やレンガや鉄などの建材には、木ほどの調湿効果がなく、その点からも、日本のように湿気が多い環境の家づくりに木が選ばれてきたのだ。

風土を熟知した先人たちの技

日本の歴史的な木造建造物の中には、築1000年を超えるものもある。
幾多もの震災をのりこえてきた、昔ながらの伝統構法でつくられた木造建築からは、職人たちの高い技術力と細やかな配慮ある工夫が伺える。
例えば、“清水の舞台”として有名な、京都の音羽山清水寺。京都を代表する観光名所となっているが、国宝になっている本堂の舞台には、「懸けづくり」という伝統技法が使われている。もともと国土が狭く、山岳地帯の多かった日本特有の構法で、山の斜面や崖に建物を建てるために、長い柱と貫(ぬき)と呼ばれる厚板を組み合わせて、格子状に木材を組むことで、揺れなどの衝撃を分散させる。清水寺の舞台は、高低差およそ13m。4階建のビル相当の高さでありながら、非常に高い耐震性を維持しているのだ。さらに、舞台の骨組みは「継手」という技法で、釘1本使われていない。わずかにできた隙間に木片で楔を打つことで強度を高めている。
このように古くから日本では、その土地の地形や気候にあわせた、画期的な建築技術がうまれてきた。
ほかにも、日本では、受け継がれてきた様々な構法がある。
外力を受けても、しなって曲がり、力を逃す、木の特性をいかした「木組み」の伝統構法。藁や砂に水を練り混ぜて造られた土が、調湿や断熱、防火の働きをする「土壁」。呼吸する壁といわれるほど湿度調整が得意で、抗菌・消臭効果の作用もある「漆喰」。それらは左官職人がコテを使って土壁の上を漆喰で仕上げることで湿度や温度が保たれる、日本伝統の「土蔵造り」にも活かされている。
自然に寄り添いながら、快適に暮らすため、たくさんの素晴らしい知恵が詰まる日本伝統の家づくり。歴代の職人たちによって、リレーのバトンのようにして、その技術と思いが受け継がれてきた。

100年を紡ぐ家づくり 

歴史的な建造物である清水寺も、かつては時代の最先端だった。何世紀にも渡る長い年月の間、大切にメンテナンスされながら、今なおその姿が多くの人々の心を捉えている。そんな、100年先の未来に受け継がれていくようなものづくりを今、本気で考えてみたい。
70年かけて育つ木を使ってつくり、30年で建て替えてしまうのはあまりに残念だ。
木が育つのにかかった年月以上に、子どもや孫の代まで、住み続けられるような家。人にも地球にもやさしい、安心して健康に暮らせる、省エネルギーの家。そして、地震に負けない強い家。
そのために、古き良き日本の家づくりに学び、伝統的な大工の想いや技術を継承しながら、現代に合わせたよりよい家づくり、さらにはまちづくりをすること。それこそが、未来の子どもたちにのこせる最高の贈り物ではないだろうか。
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