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DIALOGUE

TALK WITH vol.3
―中谷哲郎×早田宏徳 最良の未来へ(後編)―

人が暮らす最小単位の社会であり、家族の“巣”でもある住まい。TALK WITHでは、そんな心地よい住まいの先に広がる、よりよい暮らしに向かって走り続けるウェルネストホームの銘々が対談を行い、最良の未来へと繋ぐヒントを見つけていきます。
 
第三回目の対談。前編に引き続きニセコの地で、中谷と早田ふたりの未来のビジョンについて聞いていきます。
仙台の喫茶店での出会いから、20年という月日を経て。時に難題にぶつかり、立ち止まり、そしてその度に話し合い、徐々に仲間を増やしてきた中谷と早田。
「世の中を、地球をよくしたい」
その実現へ向かう道は、決して平坦ではありません。理念や考え、想いを広げていく過程では、時として厳しく険しい道もあり、人間らしく、泥臭くもがく彼らの姿も。ふたりが口にする「未来のカタチ」とは一体どんなものなのか。後編では、未来の住まいと目指すもの。これからの在り方を探っていきます。

持続可能な社会のために、ビジネスに豊かさを

早田:
最近、時間がなくなってきてるなと思うんです。私たちももう50代だから、昔のように時間が限りなくある状態じゃない。
 
中谷:
無駄づかいできなくなってきていますね(笑)。
 
早田:
結構センチメンタルな気分になりますよね。家を建てて、コミュニティづくり、まちづくりに取り組んで、その先にある持続可能な社会を目指して走ってきているけれど、お金というよりは、本当の豊さや価値を見出していくっていうところに重きを置いていきたいと思っている。その想いを胸にやってきたけれど、立ち止まって振り返ると、かつて思い描いていた50代にはなれていないように感じます。
中谷:
私自身もまったくなれてないです。でもある意味、人間くさい部分というか、うまくいかないからいいのかもしれない。ものすごい速さで急成長を遂げ、すべてが順風満帆という訳ではなく、時にはつまづいたり、立ち止まって考えたり、それがある意味私たちらしいというか。
 
早田:
世の中を、地球をよくするために頑張っているだけなんですが、思ったようにはいかないですね。環境活動や持続可能な社会に向けた活動をすることと、営利活動ってどうしても相反するというか。でも、やっぱり自分たちの理念を投げ出してまで儲けようとは思わないです。

中谷:
それは嫌ですね。豊かじゃない。でも、世の中の見方もあと10年ぐらいで変わっていくと思います。
 
早田:
10年後には社会が今よりももっとよくなってほしいですよね。
そのためにも私たちの仲間をもっと増やしていきたい。

未来の実現の鍵は、共感できる仲間づくり

中谷:
家づくり、住まいの未来のことで何を目指していくかということについては、今と変わらず、「健康で、快適で、長持ちする家」ですね。これが本来あるべき姿ですが、日本ではまだまだ普及していないと言えます。
 
早田:
お客様が老後も損せずに暮らせて、家族や誰か他の人、次世代へ譲ることもできる丈夫な家。そんな家が広がれば誰も損はしない、そういう未来がつくれますね。
 
中谷:
世界を見ると、ヨーロッパやアメリカでは、家を買った時が一番安くて、そのあとはきちんと手入れしていれば、価値としてどんどん上がっていく。それが不動産の基本的な考え方だから、5年に1度手入れしておけば、絶対に10年後には高く売れるという見通しがあります。
 
早田:
先進国ならそれが当たり前なのに、日本はどういうわけか家を買うと損をしてしまう。ここ40~50年で住宅に投資してきたコストは、積み上げていくと総額500兆円にもなるのに、それが藻屑となって消えていっている現状は大きな問題ですよね。だから、戸建の需要も低くなるばかりで。
 
中谷:
若い人たちの価値観も、変化してきていますよね。所有欲があまりなかったりとか。
 
早田:
50代の私たちにはわからないところもあるけれど、「持たない」ということは「縛られない」ということだから、ひとつの場所に縛られない生活を好んでいるとも言える。だからどんどん家を買わなくなってきているのかなと。今の若い人たちからしてみると、10年後、30年後どうなるのか予測もできないですからね。
中谷:
その一方で、アパートに対してあまりよくないイメージを持っている人は、「家賃払うよりは」という天秤にかけて家を買う人も今は多いと思います。本当に欲しいのか、仕方なく選んでいるのか、どちらが先か分かりませんが、いずれにしても集合住宅がもっと広がっていけば、そこに住むことで「家を買う」という考え方自体が変わってくるかもしれません。だから集合住宅への取組みが回り回って、高性能な戸建住宅を増やすきっかけになるかもしれないですね。
 
早田:
集合住宅経営では住む人にとっての快適さよりも、利益重視の考え方が根強くあります。仮に大家さんがそうは考えていなくても、銀行など外部から利益追従の考え方を迫られてしまう。そういう、金だけ、今だけ、自分だけ、という悪しき考え方とこの20年戦ってきて、今やっと少し考え方が変わってきている。これからですね。
中谷:
利己的になってしまうのは複合的な要因がありますが、一つ挙げるとしたら金融の仕組みが海外とは異なるからだと思います。銀行がお金を貸すということは、本来その資産価値を担保しているから貸すわけじゃないですか。だから家にお金を貸すときは、銀行の人が建物の出来上がる過程をチェックしにくるし、適正な金額として査定される。でも日本の銀行は、借りる人の「年収」「所属企業」とか、どれだけ借りられるか、返せるかと言う視点でしかみていない。お金を貸す仕組みにも問題があると思います。
 
早田:
だからコスト重視の快適ではない家が増えてしまったのかもしれないですね。これは長年取り組んできて難しい問題だと思っています。
 
中谷:
難しいですね。
 
早田:
その上で、次に何をやっていくのかというのは、公共の人たちにしっかり理解してもらうこと。だから、公共がつくる公共財産をウェルネストホームでつくるというのが近道かなと。100年後も使えるものをつくっていき、公共に広く発信していかなければいけない。無暖房でも暖かい建物。そういうものをつくって価値をわかってもらって、欲しいと言ってくれる人が増えればいいじゃないですか。
中谷:
そういう意味でも、ここニセコでの取り組みが、ひとつのアイコンになればいいですよね。
 
早田:
本当にそうですね。今一緒にプロジェクトをやっている高橋牧場の高橋さんのように、私たちの理念に共感して仲間が増えることがまさに理想です。
 
中谷:
想いの共感、ですね。
 
早田:
そうそう。ありがたいことに理念に共感し、行動してくれる。こういう仲間を増やしていきたいです。私たちだけだとできることが限られているから。
 
中谷:
やっぱり行き着くところは仲間づくり、ですね。

仲間とともに、これからも歩み続ける

早田:
住宅はあくまでも“箱”だから、当然箱だけでは暮らしは成立しません。そこで生きていくためのエネルギーが必要で、それを国や電力会社に頼らず自給自足できる住宅をつくろうというのも根本にあるので、それは引き続きやっていきたいですね。
今ウェルネストホームの家では、95%ぐらい自家消費でまかなえるような仕組みはできてきたけれど、近い将来、100%自給自足の住宅が可能になると思います。
 
中谷:
人間が操作しなくても一番快適な住宅。持続可能な家ですね。
 
早田:
まさに未来の住宅の形。キッチンやお風呂、家具のような調度品は、センスや好みがあるから、お客様の領域だと考えていますけど、私たちはもっと根底的な「躯体」の部分をやりたい。躯体が長持ちして、エネルギーが自給自足できて、何もしなくても快適にできたらいいですよね。究極の“箱”を私はつくりたい。
中谷:
今この先は、店舗、ホテル、学校など非住宅以外の分野にもどんどん挑戦して行きたいですよね。
 
早田:
自動化の技術って美術館にこそ向いていると思います。システムで年中一定の温度や湿度でキープできる。そういう技術を育んできたから、今後も活用できる場はたくさんあるはず。あとは、宇宙。
 
中谷:
え、宇宙?
 
早田:
今、宇宙関連に投資する企業が増えてきて、注目がまたさらに集まっているけれど、いずれは宇宙に家をつくらなくてはと思っている。ウェルネストホームの家が月にできる。そのぐらいまで大きなことをやらなくてはと、私は思っています。
 
中谷:
イノベーターとしてですね。
 
早田:
私たちの周りの仲間や協力してくれる人たちと話していると、やっぱりどこか並外れた考えや、未来を思い描いている部分がある。そういう人たちといると元気になります。仲間がいるから、また頑張ろうって思える。

中谷:
ここからの10年後。いや、100年後が楽しみですね。
PROFILE
株式会社WELLNEST HOME 代表取締役社長
中谷哲郎

大学卒業後、ジャーナリズムの道へ。ベンチャー雑誌「月刊ビジネスチャンス」、「週刊ビル経営」「週刊全国賃貸住宅新聞社」など多誌に携わる。リフォーム産業新聞社に異動後、リフォーム産業新聞、工務店新聞の取締役編集長に就任。2012年に退社し、グループの活動に参画。株式会社日本エネルギー機関 代表取締役/株式会社低燃費住宅ネットワーク 代表取締役を兼任。

WEB
PROFILE
株式会社WELLNEST HOME 代表取締役創業者
早田宏徳

佐官職人からキャリアをスタートさせ、約15年間住宅会社に勤務。延べ3000件を超える家づくりに携わる。2008 年にドイツへ渡り、日本の更なる住宅業界の変革を志して2009年住宅会社を退社。以降、全国で年間200回を超えるセミナー、講演活動を業界向け、エンドユーザー向けに続けている。

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